Abox People Vol.2 「写真家 高崎勉 スペシャルインタビュー」2/2

interview Vol.2-2

写真家 高崎勉 スペシャルインタビュー

(Abox Photo Academy 設立準備中に塾長の高崎勉が横浜のフォトクラブ「イメージサークル」からのインタビューを受けました。ここにその記事を転載します。)

【「Abox Photo Academy」のこと】

H:その写真講座を今年から新しく再編成してスタートさせるそうですね。

高崎:昨年、たまたま東京の受講生数名と飲みに行く機会があって、色々話し合ったんですよ。そしたら彼らがゼミに本当に望んでいるものっていうのが、僕が望んでいるものと
近かった。彼らはもっともっと学びたいし、僕ももっと密接に教えていきたい。そのためには今までのやり方と僕のアトリエでは限界があるな。って事になったんです。僕の苦手なジャンルに関してもいろいろな先生の力を借りたいし、そうするとTakasaki Seminar の「Takasaki」という冠が邪魔になってきたんです。

H:でも、もっと高崎さんの名前を広めていきたいのでは。

高崎:ですから、それは「何を目的に置くか?」から導き出されるんですよ。もう、その段階ではない気がしました。そしてもう一つ、富山で重大なことがあって。。

H:富山ですか。。故郷とはいえ、もう高崎さんにとって切り離せない土地ですね。

高崎:そうですね。でも故郷だからというよりは、富山ゼミの受講生とは秀作展があったのでかなり深い関係ですね。(ミュゼ展の一角で展示された「Takasaki Seminar受講生秀作展」のこと)その展示が終わったあと、みんなが目標を失ってはマズいので次の写真展を企画しようということになったんです。でも、僕はずっと何かが腑に落ちなかった。ミュゼ展が終わって秀作展に参加した方々の顔を見て思ったんですが、彼ら、彼女たちはこれから一人の写真家として羽ばたいていかなきゃならないのに、いつまでも高崎の写真講座がグループ展の冠になっていてはダメだろうと。そこで名前を変えることも重要なんだと思ったんです。写真講座はそのまま継続するとしても、有志でグループを作ろうと。Abox Photo Academyという講座名から、Abox Photo Clubという独立したグループを構成することも思いつきました。

H:「Abox」とは?

高崎:まあ、さっきも言いましたが僕の口癖の「カメラなんてただの箱だから」というのがきっかけですね。ただの箱。「A camera is just a box.」です。他にも裏の意味もありますけどね。これから始める写真講座の名称です。

H:高崎さんのアトリエでは限界があるということでしたが。

高崎:はい、東京の講座のステージを一旦、横浜市都筑区のStudio Apprecieに移します。そして今までは毎回テーマを決めて講座を行っていたんですが、今年(2017年)の10月からカリキュラムに則って開講します。

H:現在の西落合(新宿区)のアトリエとは何が違うのでしょう。

高崎:明らかに違うのは広さですね。アトリエは僕一人、もしくは少人数で研究するには良かったんですが、手狭で。。Studio Apprecieは2フロアあるのでスタジオスペースとセミナールームに分けられます。僕が収集していた100冊以上の写真集なども既に横浜に移しました。受講生に気軽に手にして勉強していただけたらと思ってます。

H:講師も何人かいらっしゃるのですか。

高崎:はい。僕が以前作品制作のお手伝いをしたことのある写真家の松下龍士さんにアート講座の主軸になっていただき、僕がサポートする形です。コマーシャル講座は僕が主導で不慣れなジャンルは別に方に補っていただきます。運営していただくStudio Apprecieの成田洋紀さんも講師陣に名を連ねています。

H:横浜以外での運営も変わっていくのでしょうか。

高崎:地域ごとで主催してくださる方が違うのですが、たまたま皆さん顔見知りなんですよ。ですから話は通しやすいし、10月から名前をAbox Photo Academyに変えて運営していきますが、戸惑いはないと思います。年間のプログラムが確立しているのは横浜だけで、他は不定期の講座なのでその都度、皆さんの意見を伺ってテーマを決めていくやり方は変わらないです。受講生が増えれば東京以外のエリアでもカリキュラムに沿って定期開催ができるのですが、それは次の目標ですね。

【写真教材のこと】

H:DVD教材に関しても積極的に制作・販売なさっておられますね。

高崎:最初は出演することにかなり抵抗があったのですが、、知ってるでしょ、人前に出るの苦手だってこと。(笑)でも、なんだかんだで続いていますね。これはもう広島の制作会社に感謝です。

H:監修・出演ということですが、世の中の他の写真教材とは何が違うのでしょう。

高崎:僕が一番配慮したのは、有料である意味づけです。今、ネットで写真の基礎的なことは大抵調べることができます。それらと同じことを整理して販売しても無意味でしょう。だから、高崎なりのイズムをかなり出しています。

H:具体的にはどんなことでしょう?

高崎:大きくは「テーマを持つ」ということです。シャッターというボタンを押すだけで絵ができてしまう写真というジャンルでは「上手い」「下手」という座標軸において簡単に優劣が判断できないことが多いんです。「何を伝えたいか。」と言われると初心者には難しいかもしれませんが、「写真を通じてどうなりたいか。」とお考えいただければ、また目標が明確になってくると思います。その目標に対して、「撮った写真がその役割を果たせているかどうか。」、それが上手い下手を左右する要素なんです。そういったことを噛み砕いて初歩的な技術面と併せてお伝えしています。

H:数点教材を出されていますが、初級、中級、上級、という分け方ですか?
高崎:いえ、違います。最初に出した「1眼レフカメラ上達講座」の3巻は確かに初心者向けかもしれませんが、中級者以上にもヒントになることが詰まっています。何より技術をずっと秘匿し続けてきた僕が満を持して手の内を明かしているのですから(笑)。レベルに関係なく役立つと思います。例えば三脚の使い方一つとっても、他の方にはない僕なりの哲学がありますからね。次に発表した「花の撮り方講座」は僕の作品シリーズの「Breath.」の撮り方を公開しています。

H:え、そんな、、作品の手の内を明かしていいんですか?

高崎:ええ、まあ、真似されたとしても既に発表されている作品ですし、真似するだけでなく、そこからヒントを見出していただけるといいですね。また、この教材には大阪ゼミの様子が収録されています。これもなかなか他にはない優れた内容だと思いますよ。

H:あとは、最近出された「商品撮影講座」ですが、これはもう高崎さんの専門分野ですよね。

高崎:そうです。これはもう他の人には簡単に教えることができない領域でしょうね。最近、他からも商品撮影の教本や講座があるようですが、僕の理論は独自のものですし、何より安全を第一に進行することを伝えています。

H:商品撮影となると、かなり専門的な設備投資が必要なイメージなんですが、実際、高崎さんのアトリエは高価な機材で溢れていますよね。

高崎:確かに写真機材は高価なものが多いです。そして取り扱いに危険が伴うものもあります。でも、専門知識に乏しい方でも簡単に入手できる世の中なので、注意しないといけないんです。では、安価な馴染みのあるもので代替できるのか?ということになるんですが、そこもちゃんと検証しています。100円ショップの品で代替えできるものもあれば、そこだけはお金をケチらない方がいいという機材もあります。そうした疑問に答えることから始まり、初心者でも安全に商品撮影ができるノウハウを詰めています。。。ただ販売してみて面白いのはねえ。。。

H:なんですか?

高崎:販売開始後、これまで購入している方にはプロカメラマンも多いそうです。。

H:え、やはり商品撮影はプロ向けだということですか?

高崎:いいえ、決してそういうことじゃないんですけど、さっき話した、デジカメと不況の関係のことに戻るんですが、ちゃんと修行、学習しないで、勢いや流れでプロカメラマンになった方々が、今改めてちゃんと勉強しようとなさってるってことなのでしょうね。

H:それって、微妙じゃないですか?

高崎:いえ、それこそ僕が願う、業界のレベルアップにつながるということなので嬉しいですよ。

【Team Takasakiのこと】

H:高崎さんには講座の受講生以外にもお弟子さんがたくさんいらっしゃるそうですが。

高崎:過去に僕のアシスタントをしてくれたメンバーは、苦労を共にしたこともあって、やはり特別な存在ですよね。

H:特に印象に残る方っていらっしゃいますか?

高崎:みんなです。(笑)本当に誰もが個性的でしたからね。もっと「Team Takasaki」としてメンバーで力を合わせて仕事したいんだけど、みんなそれぞれの道を歩んでいるし、、僕より売れっ子ですからねえ。。

H:そうなんですか?

高崎:プロダクション勤務時代から一緒だった小林岳夫は毎日撮影で日本中駆け回っているし、一番長く居た四方雅敬はフード関連の撮影で忙しくて、僕が仕事頼もうと思ってもスケジュールがまず合わない。ハタノヒロシは独自の路線で狩猟と写真を並行して活動している。彼にとって写真と狩猟は別々でなくて繋がってるんだよね。その方向性を最初に理解して応援したのは僕だと思ってる。

H:幡野さんは確か、高崎さんが写真教育のことで玄光社のコマーシャルフォト誌に取り上げられた時、Facebookに感動的な投稿をなさってましたよね。

高崎:あれは、ヤバかったですね。泣きそうになりました。(笑)幡野くんは過激な投稿も多くて時々炎上するらしいんだけど、あの生き方は写真家として尊敬するところがありますね。真似したいとは思わないけど、。(笑)

H:あと、四国に移住して農業をやっていらっしゃるお弟子さんもいらっしゃるとか。

高崎:十亀雅仁ですね。彼は正確に言うと僕のアシスタントだったわけじゃないんだけど、小林くんと同様、ウマが合ったんで一緒に独立した仲間ですね。思想が明快で、僕よりずっと年下なのに兄貴みたいな奴です。彼は東日本の震災以降、四国に移住して農業やってますけど、最近写真教室も始めたそうです。地元じゃ、ちょっとした有名人でしょう。東京で活動していた時から全くブレていない。いろんなことをやっているように見えるけど、全て芯が通っている。僕が四国でも写真講座をやるとしたら十亀くんに仕切ってもらいたいですね。

H:高崎さんが独立して間もない頃、女性のアシスタントとのコンビでしたよね。

高崎:あぁ、独立後の最初の弟子の福田依子ですね。これがまたしっかり者で。。昨年双子のお母さんになったんで、今は育児に専念しているようですが、すぐに僕にプレッシャーかけに戻ってくるでしょう。写真とは関係ないですが、クラッシック音楽に関してはかなり福田の影響受けてますね。

H:高崎さんの音楽好きといえばロックのイメージが強いんですが、クラッシックですか。

高崎:大人になったでしょ(笑)。。僕が初めて買って事務所でかけていたクラッシックのアルバムがたまたま福田のお気に入りだったらしく、「なんで私のCDがここにあるんですか?」って、、、「オメーのじゃねえよ。」って、二人で驚いた。数あるクラッシック音楽で偶然同じCDを気に入ってるって珍しいでしょ。それがきっかけで色々教えてもらうようになったんです。福田は元々音楽を専攻してたので。。そういえば、DVD教材の制作会社のマネージャーもクラッシックにかなりお詳しい方で、時々オススメを教えていただいてるんですが、僕にとっては音楽も写真も共通する部分が多いんですよ。

H:以前お邪魔した原宿の事務所にはとてつもない量のCDがありましたね。

高崎:やっぱり写真の話だけしていてはダメなんですよ。。音楽業界は裾野が広いから競争も激しい。学ぶところは多いですね。
H:例えばどんなところでしょう。

高崎:僕は邦楽はあまり詳しくないんだけど、音楽業界は写真業界の10年先をいってるって思ってる。例えば、デジタルを導入したことや、その逆でリバイバルブームとか。アナログレコードが再認識されたな。っと思って10年くらい経ってから写真もフィルムがもてはやされたり。だけどそんなことも、もうここまでかなって思ってる。変化の速度と種類が変わってきてるでしょ。
H:そうなんですか?

高崎:うん、感覚的なもので分析は出来てないけど。発信の仕方が急激に変化したから多くの音楽家が苦しんでいる。それはどの業界も一緒ですけど写真も何を持って発表したとするかが問われてきてますね。

H:さて、メンバーの話に戻りますが今、一緒に事務所をシェアしてる方がいらっしゃいますよね。

有岡秀倫君は超メジャーなフード撮影のスペシャリストですが同郷なんで富山のゼミにも時々顔を出してもらってます。また、近場で活動している田中聖也くんとも、5年以内に合流する気がしてます。いやあ、、、みんなに支えられてますよ。一応、僕が師匠ってことになってるけど、みんなの方が人間力が遥かに上なんで。。

H:そんなこともないのでしょうけれど、そうそうたるメンバーですね。。

高崎:だから、突き上げが凄くって。。みんな僕には撮れない写真を撮る。。尊敬できる人たちですね。。

【これからの活動は】

H:今後の活動の予定はありますか?
高崎:写真展はしばらくいいや。、、、ってことに、なる筈もなく。。(笑)まず、5月にはKYOTOGRAPYのサテライトイベントKG+でJPCOの京都展に参加します。(※JPCO=日本の写真文化を海外へプロジェクト)今年の会場は京都写真美術館となります。そして6月の東京写真月間に合わせてJPCO東京展が新宿のヒルトンホテルのヒルトピアギャラリー。

H:JPCO代表の柴田誠さんともすっかり名コンビですよね。。

高崎:そうですね。すごくお世話になってます。ミュゼでのイベントでも一緒に作品講評会を開催しましたし。彼は富山でも人気者ですよ。お互いの弱いところ補える関係だから助かります、本当に。それで今年の写真展は終わりの予定だったんですが。。

H:まだまだ、行ってください(笑)

高崎:11月開催の富山の「Abox Photo Club 写真展」に出展します。。。

H:なんでそこで声が小さくなるんですか?(笑)

高崎:いやあ~~~、これにはいろいろ経緯があって。。富山ゼミでのことでさっき話したミュゼ展の次の目標として掲げたのがこれなんですけど。。
H:はい。

高崎:こないだの富山講座の後で受講生数名とお茶してたんだけど、「僕は出さなくていいんだよね。」って軽い気持ちで言った時、みんなショック受けて、同じような顔して引きつってた。僕は指導するだけで当然出展しないものだと思ってた。みんなは逆だったんだよね。出して当然という、、。「そもそも、僕が写真展に出展する。ということはプロとして発表することなのだ」と。話したらすぐに納得してくれたんだけど、その落胆ぶりが、もう見てられなくって。。

H:で、出すことにしたと。。

高崎:そう、しかも自分で自分のハードル上げちゃった。。

H:というのは?

高崎:そのうちの一人が「過去の作品でも良いんで出してくださると嬉しいです。」って仰ってくださったんですよ。すると僕が「みんなが11月に向けて一生懸命なのに僕だけプロであることにあぐらをかいて旧作を並べることはおかしい。」って、、、自分で言っちゃった。。(笑)

H:言っちゃったんですね。。(笑)

高崎:そう。で、、、「わかった!俺も男だ。新作出す!」って、、。皆の落胆ぶりを見ると、そう言わずには、、。ここまでみんなついてきてくれたからねえ。。でも嬉しかったですよ。素直に。一緒に参加して欲しいって言われるのは。

H:確かに写真教室の先生が生徒と並んで作品を出すっていうのは珍しくはないけど、高崎さんの場合はなんか、ステージが違うという気が。。

高崎:うん、自分もどこかでそう思ってたんだろうね。みんなのこと認めてたんだけど、

勝手に一線引いていたズルい自分もいたんだろうね。

H:でも、それとこれとは。。

高崎:いや、だから、こういうことなんですよ。要するに僕が自分の経歴に「Abox Photo Club展2017出展」と記載するに値する写真展かどうかということなんですよ。「JPCO展」だってアマチュア写真家も出展しているけど、僕は堂々と経歴に載せている。アマチュアと並列展示がどうのこうのではなくて、「写真展として自分に価値があるかどうか」ということなんです。

H:では、JPCO展とAbox Photo Club展の違いって何ですか?

高崎:それは明快で、販売できるか否か。

H:JPCO展は作品の販売をしていますよね。

高崎:はい。そしてよくアマチュアの写真展にあるような1点数千円といった額縁より安い価格で販売することはJPCOではありえない。たとえアマチュアであっても写真家として自立できるようになって欲しいと願うので、そこはしっかりしてるんです。でもAbox Photo Club展は会場のルールで販売目的の展示はできないんです。そうなるとプロである僕に出すメリットはないと言える。また、JPCOと同じことをやっても意味がない。

H:ミュゼも販売はできませんでしたよね。

高崎:そう、ミュゼもAbox Photo Club展が開催されるキラリも美術館の立ち位置ですからね。だからミュゼの時も僕は出展の意義を見出さなければならなかったわけです。そしてミュゼにはそれがあった。「活動30年の節目に新たなスタートを切る意思表明する場」ということと「富山ゼミ受講生の秀作展」です。営業的には動員数の目標達成と写真集などの販売でした。

H:その意義は「Abox Photo Club展」においては何でしょう。

高崎:やっぱり、富山ゼミのみんなと出展するということに尽きますね。

H:えっ!!!ここで感情論なんですか?(笑)

高崎:そう(笑)。言い切ります。みんなとやるため、、。でもね。まだみんなに伝えてないけど、これから相当プレッシャーかけていきますよ。。だって、全体に質の高い展示にしなきゃ僕が嫌なんだもん。僕が胸を張って経歴に載せられるものにするの。そのために僕が責任持って牽引していく。。そういうこと。それに皆さん他の写真クラブにも所属なさっておられるわけで、それらとは別格になっていかなきゃ僕が参加して牽引していく意味がないですよね。

H:高崎さんも新作でいくんですよね。

高崎:そう。でね、東京のアトリエで新作の単作品作って持っていってもしようがないと思うんです。また、僕の制作ペースからすると新シリーズも無理。そういうことは僕の場合無理して合わせちゃいけないんです。だから「富山ゼミに関連した内容で仕上げていく」ということはその場で意思表明しました。

H:関連というと?

高崎:具体的なアイデアはまだこれからだけど、例えば昨年六本木の市兵衛町画廊で発表した「4.5」のシリーズ中の新作は富山ゼミが終わってから、講座の会場近くの浜辺で受講生が見守る中で撮影したんです。手法は僕がその場で考えたものでみんなの前で披露するということでゼミの一環でもあった。そんなことが次もできたら富山で出す意味があると思うんです。

H:それは、かなりハードル高いですね。。

高崎:まったくねぇ、困ったもんだ。その場で自分が決めたんだけど。言った矢先、胃が痛くなったのを覚えてる。(笑)

【家族写真のこと】

H:私は高崎さんとは古い付き合いなんで、ご家族ともお目にかかったことあるんですけど。

高崎:余計なこと聞かないでね。。(笑)

H:いや、あくまで写真の話ですから(笑)。以前お子さんが生まれた頃の写真を拝見しました。これが圧倒的な内容で普通の家族写真とは全くレベルが違う。

高崎:そりゃ、写真うまいからねえ。(笑)

H:なんというか、もうアルバムが写真集レベルで。普通、家族アルバムなんてその家族や周囲の方のためだけのものでしょう。それがグイグイ引きこまれるんです。
高崎:まあ、娘はもう多感な年頃なので撮らせてくれないんですけど、よく撮ってましたよね。しかもフィルムで。自分が職業カメラマンから一歩写真家として自覚したのは、やはり家族写真がきっかけだったかもしれません。「これは仕事の写真」「これはプライベートの写真」と切り離して考えているうちは職業カメラマンの範疇を出られない。それはいいとか、悪いとかではなくて、立ち位置の問題なんです。

H:商品撮影のカメラマンだという見方があれで吹っ飛びましたよ。失礼ですけれど人も撮ればいいのにって。

高崎:それは、そば職人にパスタ作らせるようなもんでしょう。でもそば職人だってプライベートで自分で作ったスパゲッテイくらいは食べるだろうし、またきっと美味しいの作るんでしょう。それと同じですよ。僕が自分の商品撮影のレベルでポートレートやるんだったら、メイクとか、ファッションとか、さらには美術解剖学とか、もっともっと勉強しなければいけない。でも自分は商品撮影をまだまだ極めたいから、まだよそ見してる余裕がないんですよ。僕は若い頃に商品撮影は15年くらい続けていれば後は自分の技術を切り売りして楽にやっていけるのかと思ってた。ところが未だに発見の毎日なんですよ。セッティングも日々進化させてるし。一生を捧げるに値する仕事だと思ってやってるんです。だから、ちょっと撮れるからといって仕事にするっていうのは自分の流儀じゃないですね。

H:家族写真を上手く撮るコツみたいなものはあるんですか?

高崎:それは愛でしょ。(笑)だから、安易に他人が撮れないんですよ。僕に限った話であって、決して一般論ではないですが。あと、コツじゃないけど、家族写真といっても被写体には肖像権があるんです。撮られる側が不愉快になるような撮り方はしないように心がけてます。だから娘が撮られることを嫌がった時点で素直に引き下がった。それも成長の過程ですからね。あと、まだまだあるけど、ここじゃねえ。。ゼミで話すべき内容なんで。。(笑)

【アーティスト?フォトグラファー?】

H:ここで最後に伺いたいんですけど、高崎さんって一言で言うとなんなんですか?

高崎:ブツ撮りカメラマンでしょ。

H:え、いいんですか?それで?

高崎:だから~、、、それはブツ取り(商品撮影)を冒涜した発言だって。。

H:あ、すいません。。。

高崎:商品撮影のカメラマンっていうと対人恐怖症とか、薄暗いスタジオでオタクっぽい仕事してるって思われがちなんですよ。あと、もともとはタレントとか撮りたかったんだけどドロップアウトした人が行き着く分野だとか。。まあ、イメージ抱かれちゃうものは仕方ないけど、。だからね、商品撮影の価値をまだまだ高めたい。それがこれからの30年の僕の仕事ですね。

H:最後の最後に失礼しました。(汗)

高崎:苦しゅうない。。(笑)

H:でもアーティスト業を極めるということではないんですね。

高崎:これも口癖みたいなもんなんだけど、カメラマンとかフォトグラファーとか写真家って職業だけど、アーティストって「生き様」のことだと思う。まだまだ日本じゃね。ゴッホやウォーホルのように僕は写真に対して壮絶に生きたいとは思うけど、自分の制作において、まずはアート作品とかコマーシャルという枠をもっと取っ払っていきたいと思ってますんで。。

H:それはかなり実行に移されてますよね。

高崎:いや、まだまだでしょ。僕がイメージしている到達点のレベルからはかなり低い。

H:これから、どんなお仕事がしたいですか。

高崎:パッと思いつくのは、、、やはりもっとメジャーな仕事がしたいですね。マネージメントスタッフもなく、一人で運営している割には頑張っている方だと思うけど、まだまだですね。
あと、受講生の中に優れた写真家が数名いるので、どんどんプロデュースして世に知ってもらいたいですね。

H:やはり富山のゼミに限った話ですか?富山以外ではそういう写真家がいないんですか?

高崎:いえ、居ないというわけじゃなくって、東京を含め大阪、横浜といった都会では僕以外の先生もいらっしゃるし、情報も多いんですよ。その分、なんていうかブレずに制作に集中できてる人って少ない気がする。本当に「個」から生み出される作品よりも、あちこちから引っ張り出して繋ぎ合わせたようなものが氾濫してるんですよ。そうでない人もたくさんいるけど、そうした個の表現がちゃんとできている写真家はすでに自分のポジションを確立できてるでしょう。そこに僕の出番はない。そういえば、富山ゼミの会場の敷地に「ノーベル街道」のモニュメントがあったんです。

H:なんですか、それ。

高崎:名古屋から富山を結ぶ国道41合線沿いにノーベル賞受賞者の所縁の地が多いんです。それで、ノーベル街道って呼ばれてる。実はね、これは僕個人の勝手な統計なんですけど、優れたクリエイターもこの街道沿いに多い気がするんです。愛知と富山は特に活躍しているカメラマンが多いですよね。先述の國定さんは岐阜の方だし。何か土地が関係しているのかもしれない。富山以外でもきっと、磨けば輝く原石のような方、たくさんいらっしゃるんですよ。僕はもう目をつけてますからね。自分の存在を脅(おびや)かすような写真家が出てきますよ。でも、みんな蜃気楼だったりして。(笑)

H:自分を脅かすという割には楽しそうですね。

高崎:富山の方って結構シャイなんです。怒ると怖いんだけど。。(笑)
富山に限らないと思うんだけど地方の方は始めはね、作品のことで自分なりの想いやメッセージみたいなものを尋ねると、みんな口を揃えて、「いやいや、自分なんぞにそんな大それたことは。」って仰るんです。でもね、ちょっとお話しして導き出してテーマを見つけてくと誰もが目を輝かせて変わっていくんです。「そうそう、それが言いたかったんです!」ってね。それは誰より僕自身がそうだったんですよ。誰だって社会と関わっている以上、何か想いはあるんです。要は表現に昇華させるかどうかだけです。そして作品を発表するとさらに輝いていく。時には落ち込むこともあるんだけど、それはジャンプするための屈伸ですから。そうなっていく姿を見ていると指導にも力が入っちゃいますよね。ミュゼの秀作展ではそれを目の当たりにしました。それに僕自身は賞を狙うという行為に興味がないので、「みんな違ってみんな良い」と思うんです。誰よりも上手い。とかよりも、写真を通じて人生が豊かになっていくことの方が素敵じゃないですか。

H:それは指導者としては最高に嬉しいですよね。

高崎:何よりも受講生に目標を持ってもらうための舞台を確立することなんだと思う。最初は上達が楽しくってのめり込んでいたのに、そこそこ撮れるようになると漠然と写真続けることに疑問を抱いている方が多いなって実感したんです。そのステージを用意して夢や生き甲斐を持ってもらうのが僕の役割なのでしょう。まあ、僕というプロ写真家は目の前の仕事を一つずつクリアしなきゃならないんですが。

H:ありがとうございました。これからの活動も期待しています。

高崎:ありがとうございます。今日は楽しかったです。(笑)またね。

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PROFILE:写真家 高崎勉
1967年富山市生まれ。1987年東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。アマナコーポレーションにてフォトグラファーとして12年間の勤務を経て、1999年高崎写真事務所設立。以降、広告撮影と並行しアーティストとして作品制作にも意欲的に活動。2011年の「Professional photograph exhibition」(レクトヴァーソギャラリー)を皮切りに定期的に作品を発表。同年、初の個展となる「Breath.」展開催。「毎日広告デザイン賞発言広告の部グランプリ」をはじめ数多くの受賞歴を持つとともに、幅広い雑誌・書籍等で写真作品が掲載されている。作品シリーズ「群青」がファッションブランド「junhashimoto」チーフデザイナー橋本淳氏の眼に留まり、ブランドイメージブックに起用されるなど、最近ではアート作品が広告として使われる場面が増えている。2013年に発足したJapanPhotoGlobe(日本の写真文化を海外へプロジェクト)に参画。自身の作品に留まらず写真家の写真展、写真集のディレクションを手がける。
2014年、写真講座「Takasaki Seminar」開講。コマーシャルゼミ(A-side)ではプロカメラマンに向けて「商品を売る写真」をテーマにクリエイターを育成。アートフォトゼミ(B-side)ではアマチュアからアーティストまで幅広い層に指導。NPO法人「16歳からの仕事塾」からの依頼を受け、中学生、高校生に向け講演・ワークショップを開催。また大学の研究機関から学会提出のための実験記録撮影を依頼されるなど、研究の現場にも積極的に参加。
・日本写真学会会員 ・JPCO(日本の写真文化を海外へプロジェクト)ディレクター ・写真講座「Abox Photo Academy」(旧 Takasaki Seminar)主宰
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聞き手:手塚裕久
横浜フォトクラブ「イメージサークル」代表 高崎勉氏とは研究室は異なるが東京工芸大学短期大学部の同期であり、卒業後も親交が深い。
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